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微小粒子状物質(PM2.5)分析 – 炭素分析編2

◎DRI炭素分析計の原理

分析結果例 DRI炭素分析計の測定原理はどういったものなのでしょうか。
CHN計と同様の熱分離法が基本になっています。DRIではサンプルオーブンの温度を120℃→250℃→450℃→550℃→700℃→800℃と昇温させることでフィルタ上の粒子状炭素成分の熱分離を行います。このように段階的に昇温を行うことで、各温度で特徴的な炭素成分に分離しています。550℃までHeガス条件下でOCを分析し、550℃の途中で10%O2を含むHeガス条件下に代わり、800℃まででECの分析を行います。サンプルオーブンで加熱され、遊離した炭素成分は酸化炉で二酸化マンガンを触媒に酸化されすべてCO2となり、水素ガスと混合されニッケル触媒でメタンに還元されてFID(Flame Ionization Detector,水素炎イオン化検出器)で検出されます。
これだけでは、今までの方法と同じで、ECの過大評価につながってしまいます。
この装置の大きな特徴はOCの炭化量を補正するために、サンプルオーブンに入ったフィルタにレーザー光を照射していることです。フィルタからのレーザーの反射率をモニターし、ガスを10%O2混合気体に代えた後から初期値に戻った時点までをOCの炭化量としています(透過率もモニターしていますが補正には反射率を採用しています)。これは、OCは無色で、最初のフィルタの色が本来捕集されている分のECの色である、という仮定のもとで成り立つ補正ではありますが、この補正を行うことで、これまで過大評価してきたECを、より正確に評価できるようになりました。
分析の方法もCHN計に比べると手間や作業が大幅に減っています。パソコンでサンプル名など情報を入力したら、フィルタをポンチでくり抜き、サンプルボートの上に載せます。この状態で分析スタートのボタンを押せばあとは結果が出てくるのを待ちます(1サンプル約30分)。一回の分析でOC、ECを同時に測定することができます。
CHN計に比べて作業が減ったことでフィルタの汚染も防ぐことができます。

◎PM2.5中の炭素濃度はどのくらい?

こうして分析される炭素成分ですが、実際の濃度はどのくらいなのでしょう。多くの研究者がさまざまな場所でサンプリングを行った結果が報告されています。場所、季節、天候等濃度に与える影響は様々です。山の中や離島といったいわゆるバックグラウンドといわれる地域では検出されない場合もありますし、交通量の多い道路沿道では濃度が高くなることは感覚的にもわかるかと思います。具体的には例えば、国内の都市部の一般局といわれているところではOCが約3μg /m3、ECが約1μg /m3です(質量濃度は約19μg /m31)
このOC、ECの比の変動から発生源を予測することも出来ます。年間を通してOC/EC比の変動がほとんどなければ発生源は同一であろうことが予測されます。
中国の北京の測定結果ではこのOC/EC比が冬の到来とともに変化することから冬季と夏季の発生源が違うことが示唆されています2)(北京では暖房にまだ石炭を多く使っていることが原因のようです)。もちろん他にもいろいろ調べなければはっきり特定は出来ませんがOCとECを測定するだけでもこのようにわかることがあるのです。

<参考>

1) 中央環境審議会大気環境部会(第28回)配布資料

2) 高橋克行ほか;北京と東京における都市大気エアロゾル中の炭素成分の特徴
   (エアロゾル研究,23(3),194-199,2008)

微小粒子状物質(PM2.5)分析 – 炭素分析編1
微小粒子状物質(PM2.5)分析 – 炭素分析編2

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