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微小粒子状物質(PM2.5)分析 – 炭素分析編1

◎はじめに

PM2.5電子顕微鏡顕画像  PM2.5の環境基準値が設定されようとしていますが、現況の日本のPM2.5濃度は環境基準値を上回っている場所が多く、規制が必要となってくることが考えられます。しかし、発生源がわからないことには具体的な規制もしようがありません。発生源の実態を解明するためには成分分析が必要となってきます。PM2.5中の成分は多岐にわたりますが、今回は中でも炭素成分に注目してみたいと思います。

◎炭素成分は粒子状物質中の主要成分

炭素成分は粒子状成分の主要成分の一つで、大きく有機性炭素(OC;Organic Carbon)、元素状炭素(EC;Elemental Carbon)、炭酸塩炭素(CC;CarbonateCarbon)の3つにわけられます。 ディーゼル排気粒子成分例 この中でも特にECは主に燃焼によって生成する一次生成粒子(発生源から出てくる時にすでに粒子の状態のもの)です。またディーゼル排気ガスの主要成分で(以前、東京都知事がペットボトルに入れて振っていたもの)、都市大気の粒子状物質中のディーゼル排気ガス寄与率を知るのに大変重要な情報となります。最近では自然起源や、粒子の二次生成(発生源ではガス状成分だったのに空気中に出ることによってさまざまな要因で粒子化するもの)由来のOCも注目されてきており、炭素成分の分析の重要性はますます高まっているといえるのではないでしょうか。

◎炭素成分の測定方法とは

では、具体的に、粒子状物質中の炭素成分はどのようにして測定するのでしょうか。
大気中の粒子状物質中の炭素成分分析法はこれまで確立しておらず、研究者や自治体によってさまざまな分析方法がとられていました。主に行われてきた方法はCHN計※1を用いた熱分離法です。熱分離法とは異なる温度と異なる気体条件下で炭素成分を粒子状物質から遊離させる方法です。例えば、Heガスの下で550℃に加熱することで遊離してくる成分はOC、He+O2ガスの下で800℃に加熱することで遊離してくる成分はECといった感じです。
OCは550℃以下の温度でHeのような不活性なガスのみの条件下でも遊離しますが、熱をくわえることで炭化する、という問題があります。OCが炭化する、というのは砂糖を加熱するとだんだん黒くなり、最後には炭になってしまいますが、ああいったイメージです。フィルタ上に集められた粒子中のOCが熱をくわえられることで黒くなるのです。OCが炭化するとこの炭化した分は炭=ECとして検出されてしまいます。そうなるとECを過大評価してしまうのです。
そこで、米国のDRI(Desert Research Institute)が開発し、IMPROVE(Interagency Monitoring of Protected Visual Environments)※2でも採用されている炭素分析計を用いた分析を行います。
DRI炭素分析計  このDRI炭素分析計はECを過大評価してしまう、という問題を解決するために、熱分離に加えてレーザー光を用いることによってOCの炭化量を補正する、という方法を採用した分析計です。
 2007年にでた「大気中微小粒子状物質(PM2.5)測定方法暫定マニュアル 改定版」にもこの装置を用いた分析法が記載されています。

【ワンポイント用語説明】

※1:CHN計
有機物は完全に燃焼するとH2O,CO2,N2等に分解されます。CHN計は試料を燃焼分解し、H2O,CO2,N2をそれぞれ測定し、試料中の炭素(C)、水素(H)、窒素(N)の同時定量を行う分析計です。

※2:IMPROVE(Interagency Monitoring of Protected Visual Environments)
米国に設置された視程を監視する測定ネットワーク(政府機関)です。特に国立公園や未開地といったいわゆるバックグラウンド地域の監視を行っています。視程に大きく影響しているのはエアロゾルですから大気エアロゾルの測定・監視ネットワークといってもよいかと思います。

微小粒子状物質(PM2.5)分析 – 炭素分析編1
微小粒子状物質(PM2.5)分析 – 炭素分析編2

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