労働安全衛生規則改正:熱中症対策強化のお知らせ
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2024年4月より労働安全衛生規則が改正され、職場における熱中症対策が強化されました。2025年6月1日より施行されます。主な変更点として、WBGT値(暑さ指数)の測定と記録の義務化、28℃以上の作業場での休憩場所の整備、水分・塩分補給の徹底などが規定されています。また、熱中症の症状が疑われる労働者を見つけた場合の措置や、熱中症予防管理者の選任も新たに義務付けられました。ムラタ計測器サービスでは本改正に基づき、環境測定や対策検討により熱中症リスクを未然に防ぐ体制づくりをサポートいたします。
【近年の熱中症の発生状況】
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地球温暖化の進行により年々平均気温が上昇し、日本各地では猛暑日(最高気温35℃以上)や熱帯夜(最低気温25℃以上)の頻度が増加しています。こうした気候の変化は私たちの健康にも深刻な影響を及ぼし、なかでも代表的な例が「熱中症」です。
総務省消防庁の発表によると、2010年以降、熱中症による緊急搬送者数は毎年4万~9万人前後で推移しています。特に2024年には全国で累計97,578人が救急搬送され、過去最多数を記録しました。特に月別で見ると7月に最も多く(43,195人)、続いて8月、9月と続きます。今後も、梅雨明けや急な気温上昇時にはリスクが高まるため、夏期に限らず春や秋の「暑さのぶり返し」にも注意が必要です。
【熱中症に関する労働安全衛生規則の改正(2025年6月1日施行)】
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2025年6月1日より、熱中症対策を強化するための労働安全衛生規則の改正が施行されます。この改正の背景には、熱中症による労働災害の多発と、事業者による体系的な対応の必要性が挙げられます。
- 作業環境のWBGT値の測定・記録(WBGT計の設置と定期測定)
- 暑さに応じた作業中止・休憩の基準設定
- 休憩時・作業時に限らずこまめな水分・塩分補給の実施
- 冷却設備の確保
- 始業時・作業時の体調管理と異常時の対策の設定
- 熱中症予防と応急処置の教育を実施
熱中症による救急搬送のうち、全体の3~4割は住宅内からの通報ですが、仕事場からの通報も1割程度を占めており、とくに建設業・製造業・運送業を中心に、毎年20人前後の死亡事故が発生しています。こうした事故は多くが予防可能な労働災害とされており、特に中小企業や現場単位では暑さ対策が従業員任せになっているケースが少なくありません。そのため、事業者による計画的かつ組織的な熱中症対策が強く求められてきました。
今回の法改正では以下の3点が柱となっています:
1.通報体制の整備
熱中症の疑いがある労働者に対して、迅速に報告・対応ができるよう、事業所ごとに連絡体制と担当者を定める。
2.対応手順の明確化
異常時の離脱・冷却・医療機関への搬送などの行動手順を事業所ごとに文書化し、あらかじめ整備する。
3.労働者への周知徹底
策定した対策内容について、全労働者に理解させ、実行を促す体制を構築する。
今回の改正では、暑さ指数WBGT28以上(或いは気温31℃以上)の環境で1時間以上の連続作業(或いは1日4時間超の作業)を行なう事業所(作業環境)が対象となります。つまり、業種・業態を問わず、この条件を満たす全てが対象となる点が重要です。
これらの背景から、下記対策が必要になります:
熱中症は「暑いから仕方ない」では済まされない、命に関わる重大な労働災害です。今後さらに暑さが厳しくなることが予想される中で、事業者は法令遵守とともに従業員の安全と健康を守る社会的責任を果たす必要があります。
今回の規則改正を機に、職場全体で暑さ対策を見直す機会としていただければ幸いです。
【熱中症の対策とムラタ計測器サービスのご案内】
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熱中症のリスクを的確に管理するには、気温だけでなく湿度や輻射熱など複数の要素を総合的に捉えることが重要です。そこで人体が受ける熱ストレスの紙業として広く利用されているのがWBGT(湿球黒球温度)です。
このWBGT値は、労働環境や運動環境における熱中症リスクの評価基準として国際的に採用されており、日本でも環境省や気象庁による熱中症警戒アラートの基準として活用されています。
ムラタ計測器サービスでは、このWBGT値をリアルタイムかつ高精度に測定・記録できる「EOS LOGGER」を提供しています。EOS LOGGERでは、気温・湿度・黒球温度・気圧のデータからWBGTを算出・表示し、リアルタイムな熱中症対策に有効なIoT型のモニタリングシステムです。
EOS LOGGERの導入により、作業現場や屋内施設における暑熱環境の「見える化」と「即時対応」が可能となり、従業員の熱中症リスクを未然に防ぐ体制づくりをサポートいたします。
【関連WEBサイト】
- 熱中症による救急搬送人員に関するデータ(平成20年~令和6年)(総務省消防庁データ)
- 職場における熱中症対策の強化について(厚生労働省公開資料)
- 第175回労働政策審議会安全衛生分科会(資料)(厚生労働省公開資料)
- 日常生活における熱中症予防指針Ver.3確定版(日本生気象学会)
- IoT環境モニタリングシステム EOS Logger